SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年に国際連合が掲げた持続可能な開発目標です。SDGsには、17の目標があり、その中には食や農業に関する目標も含まれています。
一方、有機農業は化学肥料や農薬を使わず、土や作物を大切にした栽培方法で、健康的で美味しい食材を生産する農業の一つです。SDGsと有機農業は、持続可能な食と農を目指す上で密接な関係があるといえます。
今回はSDGsと有機農業の関係性、現在の日本における有機農業の課題、SDGsと有機農業の関係がもたらすメリットについて詳しく解説します。
目次
- SDGsと有機農業の関係性
- 日本における有機農業の現状とこれからの課題
2-1.有機農業の生産性の低さ
2-2.高いコスト
2-3.気候変動や自然災害の影響を受けやすい
2-4.購買者の認知度が低い - SDGsと有機農業の関係がもたらす社会的メリット
3-1.地球環境の保全
3-2.健康への配慮
3-3.貧困や格差の是正
3-4.消費者のニーズに対応した商品提供 - 個人でも始められるSDGs×有機野菜の取り組み
4-1.有機野菜を積極的に日々の食事に取り入れる
4-2.地域の有機農業支援
4-3.有機農業に関連した教育や情報発信
4-4.食品ロス削減に取り組む - まとめ
1.SDGsと有機農業の関係性
SDGsの中で、食や農業に関連する目標には、以下のようなものがあります。
- 飢餓をゼロにする
- 持続可能な農業を促進する
- 森林を守り、再生する
- 水と衛生に関する改善を促進する
これらの目標は、有機農業がSDGsに貢献する点にもつながっています。有機農業は、土壌を健康に保ち、農薬や化学肥料の使用量を減らすことで、地球環境を保全することにつながります。また、有機農業では、健康的で美味しい食材を生産できるため、SDGsの「飢餓をゼロにする」という目標にも貢献することができます。
2.日本における有機農業の現状とこれからの課題
有機農業の耕地面積は年々増加しており、2022年時点で2万5200ha、10年で50%増加しています。しかし、日本国内全体の耕地面積に占める割合はわずか0.6%であり、今後も大きく改善が求められている分野の一つです。
現状 | 課題 |
---|---|
・有機農業面積は年々拡大しており、2022年時点で2万5200haとなっている。 ・有機JAS認証農産物の生産量も増加している。 |
・有機農業の普及には、生産費用が高いことが課題となっている。 ・有機農業の生産者が高齢化しており、後継者不足が問題となっている。 ・有機農業に必要な技術やノウハウを習得するための教育や指導が不十分である。 ・有機農業に適した土地の確保が困難である。 ・有機農産物の流通や販売ルートの整備が進んでいない。 |
現状として、日本において有機農業は徐々に拡大しているものの、課題も多く残されています。有機農業は、化学肥料や農薬を使用せずに栽培を行うため、生産費用が高いことが課題の一つです。
また、有機農業を行う生産者が高齢化しており、後継者不足が問題となっています。有機農業に必要な技術やノウハウを習得するための教育や指導が不十分であること、有機農業に適した土地の確保が困難であること、そして有機農産物の流通や販売ルートの整備が進んでいないことも要因です。
有機農業の生産性は非有機農業に比べて低く、高い技術力やコストが必要となります。また、有機農業は、気候変動や自然災害などの影響を受けやすく、安定した生産が難しいという問題があります。
- 生産性の低さ
- 高いコスト
- 気候変動や自然災害の影響を受けやすい
- 購買者の認知度が低い
2-1.有機農業の生産性の低さ
有機農業は、肥料や農薬の使用が制限されるため、生産性が非有機農業に比べて低くなります。有機農業を行うためには、高度な技術や知識、労力が必要となり、新たな担い手が少ないという課題があるのです。
2-2.高いコスト
有機農業は、肥料や農薬を使わない代わりに、有機質肥料や微生物肥料などの使用が必要となります。これらの肥料は、非有機農業の化学肥料に比べてコストが高く、また、有機農業の労働力や作業時間も非有機農業に比べて多く必要とされます。そのため、有機農業を始めるためには、投資や費用が必要となります。
2-3.気候変動や自然災害の影響を受けやすい
有機農業は、肥料や農薬を使わないため、土壌や植物の状態を良好に保つことが重要です。
しかし、気候変動や自然災害による異常気象や災害が発生した場合、土壌や植物に悪影響を与えることがあります。そのため、有機農業を行う場合には、気象条件や災害リスクなどを考慮して、適切な対策を講じる必要があります。
2-4.購買者の認知度が低い
有機農業は、環境や健康に配慮した栽培方法であるため、消費者価格が高くなります。一般的なスーパーで販売されている慣行野菜と比較して1.5~2倍ほどの価格になるため、一部の健康志向の方でないと購入されていないという現状があります。
また、有機農産物は非有機農産物に比べて生産量が少なく、入手しにくいことがあります。さらに、一部の消費者には有機農業に対する誤解や不信感がある場合もあります。
このような課題に対しては、有機農業についての情報提供や啓蒙活動、また消費側からも積極的な情報収集が必要になってくると言えるでしょう。
3.SDGsと有機農業の関係がもたらす社会的メリット
有機農業がSDGs(持続可能な開発目標)に貢献することで、以下のようなメリットがあります。
3-1.地球環境の保全
有機農業は、化学肥料や農薬を使用せずに栽培を行うため、土壌汚染や水質汚染のリスクが低く、自然環境を保護することができます。また、有機農業による作物栽培は、二酸化炭素排出量を減らすことができるため、地球温暖化を抑制することにもつながります。
3-2.健康への配慮
有機農業では、農薬や化学肥料の使用が制限されているため、有害物質が食品に混入するリスクが低くなります。また、有機農業によって栽培された食品は、健康的で栄養価が高いことが知られており、消費者の健康に配慮した食生活を促進することができます。
3-3.貧困や格差の是正
有機農業は、地域の農業を活性化させることができます。農家が自然と共生しながら栽培を行うことで、土地の価値を高めることができ、地域の経済を支援することができます。
また、有機農業は、地域の小規模農家や農業労働者にも雇用機会を提供することができ、貧困や格差の是正にも貢献します。
3-4.消費者のニーズに対応した商品提供
有機農業によって栽培された食品は、独自の味わいや栄養素を持っているため、消費者に高い価値を提供することができます。
また、消費者の健康や環境に配慮した商品に対する需要も年々増えています。有機農業によって栽培された商品は、将来的に多くの人に求められる可能性も高いと言えるでしょう。
4.個人でも始められるSDGs×有機野菜の取り組み
4-1.有機野菜を積極的に日々の食事に取り入れる
有機野菜を積極的に消費することで、需要を喚起することができます。有機農産物は、農薬や化学肥料を使用していないため、環境面だけでなく、人体にも有害な残留物を含まない安全な食品となります。また、有機農法で育てられた作物は、土壌中に豊富に含まれる栄養素を吸収し、栄養価が高いという点もメリットです。
4-2.地域の有機農業支援
地域の有機農業生産者を支援するため、地域のコミュニティや団体での有機農業の普及活動を行うことができます。地域の有機農業生産者が直接消費者に販売する「直売所」や「農産物直売所」の利用を促進することで、生産者と消費者を繋げ、地域の有機農業の発展に寄与することができます。
4-3.有機農業に関連した教育や情報発信
有機農業に関する正しい知識や情報を広めることで、有機農業の理解を深めることができます。有機農業に関するイベントやセミナーに参加したり、有機農業についての本やネット上の情報を積極的に取り入れたりすることで、有機農業の普及に寄与することができます。
4-4.食品ロス削減に取り組む
個人レベルでできる食品ロス削減の取り組みとしては、購入時には必要な量を計算して購入する、残った食品はすぐに冷凍する、消費期限の近い食品は先に使うなどの方法が挙げられます。これらの取り組みは、一人ひとりが小さな変化を積み重ねることで、大きな成果を生むことができます。
食品ロス削減は、私たちが食べ物を通じて地球と共生するために必要な取り組みの一つです。持続可能な社会を目指す上で、食品ロス削減に対する意識を高め、積極的な取り組みを行っていきましょう。
まとめ
今回は、SDGsと有機農業の関係性について解説しました。SDGsの目標の一つである「持続可能な農業」を達成するために、有機農業は重要な手段の一つであり、有機農業がSDGsに貢献することで、環境、社会、経済の面で様々なメリットをもたらします。
また、個人がSDGsに貢献しつつ、有機農業の普及を進めるためには、積極的に有機農産物を消費することや、食品ロス削減に取り組むことが求められています。
最後に、持続可能な社会を目指す上で、有機農業とSDGsの関係について考え続けることの重要性を強調しました。私たち一人ひとりが、日々の生活の中でSDGsに貢献することで、より持続可能な社会の実現に向けて一歩ずつ進んでいけると思います。
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【参考】農林水産省
「トピックス1 食料・農業・農村とSDGs(持続可能な開発目標)」
「17の目標と食品産業とのつながり」