私たちが日頃当たり前のように食べている野菜には残留農薬が存在しています。
農薬が体によくないだろうということは何となくわかるけど、どれぐらいの危険性なのか?については詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、オーガニックアドバイザーと野菜ソムリエの資格を持つ私が、農薬が使われるようになった歴史や現在の日本の法規制、農薬が気になる方向けの野菜選びの方法を詳しく解説します!
目次
農薬の健康被害の歴史と現在の日本の法規制
農薬とはそもそも何なのか?
- 野菜や果物が病気にかかりにくくする
- 昆虫・菌・植物などを防ぐ
このような目的で使用される薬剤のことで、殺虫剤、除草剤、殺菌剤などの総称です。
かつての農業は、農家さんが手作業で虫や病原菌を駆除しており、家畜のたい肥、もみ殻、作物残さなどを使った天然由来の農薬以外は一切使われていませんでした。
ところが、第二次世界大戦後の時代、一時的に人口が減ってから再度人口爆発が起き、世界中の国の再生に由来する大量生産のニーズにより、農業の形も変わってきました。作物の大量生産と生産の効率化が求められ、そこで、人間が合成した化学物質「化学合成農薬」が開発されたのです。化学合成農薬は、天然由来の農薬よりも圧倒的に効果が高く、一瞬で世界中に普及しました。生産を安定させ、また蚊が媒体となる病気の伝染病予防にもなるなど、農薬にはメリットもあったのです。
しかし当時はまだ化学合成農薬の人間への害については研究がなされていませんでした。やっとここ数十年前より、農薬の危険性が浮き彫りになってきたのです。
かつては日本でも「生産を効率化する」と「生産コストを下げる」の2つを追い求めて、手軽に使用ができる「有害化学物質」を生み出しました。有害化学物質のうちの一つであるのが、化学合成農薬に使われているDDTという成分です。DDTには以下の特徴があります。
- 自然環境の中で分解されづらい
- お大気や海水の循環により地球をぐるぐる回っている
- 人間の体内に圧縮・蓄積する
このような性質を持っています。従い、一度生産され、使われた農薬は、土に残留農薬として、また人間の体内に蓄積物として残ってしまい、なかなか取り除くことが難しいのです。
このような危険性があったため、現在の先進国ではDDTの使用が禁止されています。日本では1968年(昭和43年)に農薬(製造販売)会社が自主的に生産を中止、1971年(昭和46年)には販売が禁止されました。世界的にも、環境への懸念から先進国を中心に、2000年までには、40カ国以上でDDTの使用が禁止・制限されています。(※参照:「DDTはもう使われていないのですか」)
日本の農薬使用量
なぜ日本はここまでたくさん農薬を使っているのか?その背景にはいくつかの要因があります。
- 日本の農協の企画が厳しい⇒少しでも形が崩れていたり、大きさが異なった作物は販売できない
- 畑の面積が少ない⇒70%の面積を山で覆われている日本は、世界各国と比べて畑の面積が少なく、その分生産性が求められる
- 日本の消費者が綺麗な野菜を求めてしまう⇒虫食いや変色した野菜への消費者のイメージが悪い
- 海外では農薬の害に関する報告書が広く公開されているが、日本では情報が少ない⇒海外と比べて日本人の消費者は意識が薄い
- 欧米では政府による有機農家さんの資金援助が盛ん⇒日本では有機農業は割高になり、儲からない
確かにこの背景を見ると、頷けるところはありますよね。ただし、農薬の影響が気になる方や体調が悪くなったと感じるのであれば、オーガニック食品を購入したりなど自ら選択できるようになることも大切なポイントです。
どのように農薬の害から身を守ることができるのでしょうか?次の章でご紹介します!
農薬を除いた食事をとるには
農薬を生活から除くことは実はさほど難しいことではありません。鍵は、「正しい知識を持つこと」のみ!ここで意味する「正しい知識」とは、野菜・果物選びを間違えないことにあります。
現在、日本で購入できる野菜は以下55種類となります。
野菜の種類 | 特徴 | 農薬の使用量 |
---|---|---|
慣行栽培野菜(一般野菜) | 農林水産省が設定した範囲内の量で農薬を散布している | × |
特別栽培野菜 | 慣行栽培野菜と比べて農薬量を半分に抑えて栽培された野菜。「半分」の基準は県ごとに異なる。 | △ |
無農薬野菜 | 化学合成農薬を使用せずに栽培された野菜。ただし、作物の栄養となる肥料には、化学合成物質使用可能。 | △ |
有機栽培(オーガニック) | 国際的な有機JAS規格のルールに沿って、化学合成農薬・化学合成肥料一切不使用 | ◎ |
自然栽培野菜 | 化学合成農薬・化学合成肥料は不使用であるが、有機栽培の野菜のように認定機関がないため、不正が起こりうる。農家さんへの信用が求められる。 | ◯ |
農薬の使用量を気にして選ぶということであれば、「有機野菜(オーガニック野菜)」を選択するといいでしょう!
有機野菜は、慣行栽培の野菜を比較して、以下のようなメリットがあります。
- 信頼性が高い
- 味が美味しい
- 栄養価が高い
野菜は、化学農薬と化学肥料を使用することで、野菜の味と栄養価が圧倒的に落ちます。野菜は、三大栄養素である窒素、リン、カリがあれば育つと言われており、慣行栽培の野菜はこちらのみ含んでいますが、有機野菜には三大栄養素以外にも、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄、ミネラルなどが豊富に入っています。栄養価で言うと、1日に推奨されている野菜の摂取量350gは、有機野菜であればその半分で十分^^
複雑な栄養素構成が味の美味しさにも響きます。慣行栽培の野菜が多く含んでいる有害成分「硝酸」の値が低く、そのため、えぐみが少なく、すっきりした味わいになります。また、深みと雑味が特徴的です。実際に普通の野菜と有機野菜を食べ比べてみると、味が全然違うということがわかります!
問題は、有機野菜が購入できる場所が少ないこと。一部のスーパー(成城石井、いなげや、イオン)では「有機野菜プチコーナー」として少量ですが置いてあることがあります。また、オーガニックに特化した小型のお店を利用するのもいいですね。その中でも、私が最もおすすめするのは有機野菜宅配サービス。日本には現在20社を超える有機野菜宅配サービスが存在します。自宅まで届けてくれるためとても便利です。
各社、初回限定利用のキャンペーンとして、お試しセットをお得な値段(1,000〜2,000円)で提供しているため、これから有機野菜を生活に取り入れていきたい人が気軽に始めてみやすい点もメリットです。
野菜の残留農薬の対処方法
有機野菜は購入できる場所が少ないだけではなく、もう一つ値段が高いというデメリットもあります。だいたい、スーパーで購入できる一般野菜の1.5倍〜2倍と考えていいでしょう。
できれば有機野菜を取り入れたいけど、家計的になかなか難しい・・・そんな方は、慣行栽培の野菜の正しい取り扱い方法を学べば大丈夫。キーは「洗い方」にあります!残留農薬は、100%ではありませんが、ある程度であれば、しっかり洗うことによって取り除くことができます。
主な方法は6つ!
方法 | 効果 |
---|---|
皮を剥く | ◯ |
しっかり水で洗う | ◯ |
重曹、塩水、酢水を使って洗う | ◎ |
茹でる・加熱する | ◯ |
オゾン水を使って洗う | ◎ |
皮を剥く
農薬の多くは、野菜の外側部分、いわゆる皮部分に蓄積されています。その皮を取っちゃえばその一部を取り除けるということです。ただし、同時に、皮は野菜の栄養素が最も濃縮されている部位でもあります。従い、肝心な皮部分を取ってしまうとせっかくの野菜の栄養価が低くなってしまうので、個人的にはさほどおすすめしない方法です。
しっかりと水で洗う
多くの農薬は「水溶性」であるため、水に溶けやすい性質を持っています。つまりは、水をかけると、表面の農薬が取れて、水と一緒に流れてくれます。手だけではなく、スポンジでしっかりとこするとより効果的です。
ただし、100%取れるというわけではなく、また、すべての農薬が「水溶性」なではないため、効果はさほど高くはないです。
重曹、塩水、酢水を使って洗う
大きめのボウルに野菜、水、重曹/塩/酢のいずれかを一定量入れて数分放置すれば、水で洗うだけと比べると効果的に農薬を洗い流すことができます。
※重曹は、必ず「食用」を選ぶようにしましょう。
手軽にできて、効果も、水だけよりかは高いため、個人的にはno.1のおすすめの方法です。
茹でる・加熱する
熱を加えることで野菜についている薬剤や菌の多くが落ちてくれます。こちらも、効果は水洗いより遥かに優れています。ただし、加熱することにより野菜の栄養価が大幅に落ちたり(例えば、ほうれん草を1分茹でると栄養価は半分になります!)、味が変わってしまったりと、デメリットも多いです。
オゾン水を使って洗う
オゾン水は、殺菌作用がとても高い「オゾン」を普通の水に溶かした水です。農薬を洗い流した後は、酸素に変換されるため、安全性も高いです。農薬だけではなく、ウイルスの除菌や殺菌効果もあるため、キッチン周りの除菌・洗浄も同時にできます。
独立行政法人農畜産業振興機構「野菜の保存技術研究~オゾンを利用した野菜の保存条件検討~」のような公式な研究結果などを見ると、効果について根拠がしっかり認められているので、方法としては◎です。
オゾン水を購入するには、専用のオゾン水を生成してくれる機械を購入する必要があります。メーカーにもよりますが、安いので3万円〜高いので7万円程度と、かなりの初期投資が必要になります。
初期投資と洗う手間を考えると、家庭用として使用するのであればそもそも有機野菜を購入する方法が手間も少なく安い価格で安全性の高い野菜を買うことができます。これらのメリット・デメリットをみながら、方法を選んでみると良いでしょう。
まとめ
本記事では、農薬の危険性や現状、有機野菜のメリットについて解説してみました。農薬は日本の食料生産を安定させ、伝染病などの原因を除去してくれるメリットがある反面、健康被害の歴史もあり、気になる方も多いのが現状です。
農薬の健康被害が気になる方は有機野菜を積極的に食事に取り入れる方法があります。この記事を参考に自身の野菜選びを進めて頂ければ嬉しく思います。