「料理をしなくても罪悪感を感じない未来へ」惣菜宅配のミールセレクト代表インタビュー

ミールセレクトは、2024年8月16日から開始した冷蔵・冷凍惣菜の定期宅配サービスを提供する新しい食品サービスです。

特徴は複数の人気ブランドの惣菜を同時注文でき、店頭価格でお届けすることです。冷蔵惣菜は「受注生産方式」で、注文後に製造を開始するため、食品ロスを最小限に抑え、店頭価格での宅配が可能になっています。紀ノ国屋、大戸屋などの人気ブランドや、地元で愛される名店の新鮮な料理をお届けしています。

今回はミールセレクトの代表「八田 麻紗子」氏にお話をうかがい、ミールセレクト創業の背景や想い、他のサービスとの違いや店頭価格販売の仕組みについてインタビューを実施しました。

株式会社ミールセレクト 八田 麻紗子 氏

1980年生まれ・東京都出身。東京大学大学院工学系研究科修了。
約8年間の交通計画分野のコンサルタント経験、大手総合商社での約7年間の新規事業開発や商品販売経験を経て、2021年11月、株式会社ミールセレクトを設立。

ミールセレクト

ミールセレクトは、複数の人気ブランド惣菜の定期宅配サービスを提供する新しい食品サービス。冷蔵総菜は「受注生産方式」を採用しており、注文後に製造を開始することで、店頭価格でマルチブランドの総菜・食品を購入することができる。食品ロスを最小限に抑えながら、紀ノ国屋、大戸屋などの人気ブランドや、地元で愛される名店の新鮮な料理を届けてもらえる。

取り扱いブランド(2024年10月時点)
紀ノ国屋、大戸屋、神戸コロッケ、Soup Stock Tokyo(2024年秋冬頃より取り扱い開始予定)、にんべん、べじはん、RFFF(ルフフフ)、まつおか、牛たん炭焼き 利久

ミールセレクトの特徴
  • 複数の人気ブランドの惣菜を同時注文できる
  • 管理栄養士が献立を提案
  • 献立のカスタマイズが可能
  • 受注製造型サービスの構築によりフードロスを削減して店頭価格宅配を実現

目次

  1. ミールセレクト創業の経緯・背景
  2. ミールセレクトの特徴や他社サービスとの違い
  3. 食の安全性について
  4. ミールセレクトの今後、目指す未来
  5. 編集後記

ミールセレクト創業の経緯・背景

ミールセレクトの創業の背景、想いについて教えてください

「共働き世帯が増え、働きながら仕事と家事の両立に悩む人たちがいる中で、家事負担の軽減のためのサービスを提供したいと考えてミールセレクトを創業しました。ミールキットなどでも料理の手間が省けますが、仕事が遅くなってしまった時や子育ての忙しい時期など、調理の時間がなかなか取れなったりする方も多くいます。そのような方に、お惣菜を届けて、それがコスパ良くて、美味しくて、家族が笑顔になれるサービスを提供したいというのがミールセレクト創業の想いです。

また、現在のミールセレクトは女性メンバーが中心となって運営しています。メンバーの中には、3児の母など子育て中の者もおり、自分たちの課題として向き合いながら、女性が仕事と家庭の両立をしやすい社会に向けて事業を作っています。」

八田さんのこれまでのキャリアとは異なる食品業界への転身ですが、宅食サービスに興味を持たれた実体験やエピソードなどはありますか?

「私の実体験として、働きながら食事の準備をするのがとても大変だった、ということがあります。以前は総合商社に勤めていたのですが、かなり忙しく、私が入社した時点では総合職の女性比率が4%以下という環境でした。遅くまで働いて帰ると食事の準備ができなかったりなどで仕事のプライベートの両立が難しく感じていました。

自分自身のそのような経験がありつつ、コロナ禍になり、在宅ワークで会社に行く機会がなくなると、通勤途中で駅ナカの惣菜をついでに購入するようなこともなくなりました。郊外だと買える場所もなかったりするので、店頭価格よりもずっと高い金額で宅配サービスを利用していました。

このような状況の中で、『店頭価格で、マルチブランドで、自宅に届く、というサービスがあればいいのにな』と思うようになりました。また私だけでなく、特に子育て世帯の方々には食事の準備がより大きな負担になっているというニーズもあり、ミールセレクトを創業するきっかけになっています。」

柏の葉スマートシティでの実証事業を経てサービス提供が開始されています。実証事業で得られた知見はありますか?

「柏の葉スマートシティでの実証事業あってこそ、事業化につながったという実感があります。店頭価格の宅配を実現するために、主に下記の2点を目的として実施しました。

  • 店頭販売用の冷蔵惣菜の受注製造のオペレーションの確立
  • 利用者様の需要の確認

ミールセレクトは注文を受けてから惣菜の製造を行うため、3日前に注文を確定しなければならないのですが、『店頭価格と同じなら使いたい』という利用者の方の反応を多くいただけたということ、プロセスの確立に成功したため、事業化に至っています。」

柏の葉スマートシティでの実証事業

実証事業の中で受注製造のオペレーションを確立するまでにどのような課題がありましたか?

「店頭販売用のデリケートな冷蔵惣菜を、弊社の施設で一時保管し仕分け・宅配するという新しい取り組だったため、お取引先様からは徹底した温度管理を求められました。仕分け作業を行う作業部屋の室温や、検品・仕分け作業時間などを細かく取り決め、お取引先様に提案し、その取り決めどおりに毎日温度管理を行い記録に残しました。

また、鳥インフルエンザの影響でお取引先様が契約先の農家から予定どおり鶏卵を仕入れることができず、弊社のECサイトでお客様から注文を受けた後にキャンセル・返金させていただいたこともあります。このようなケースは実際のところ稀でしたが、受注製造を見込んで注文を受けたものの販売できないケースがどの程度起こり得るのか検証することが出来ました。また、このように想定外の事態が発生した場合、お取引先様やお客様に対して迅速に適切な対応ができるよう、オペレーションやコミュニケーションのプロセスを都度見直し改善しました。」

ミールセレクトの特徴や他社サービスとの違い

ミールセレクトの特徴と他社との違いについてあらためて教えてください

「『費用対効果(コスパ)』と『飽きない』の2点が大きなポイントだと思います。

費用対効果(コスパ)についてですが、他の宅食サービスと大手スーパーの惣菜を同価格分、試食した100人以上の方にアンケートを取ると、87%の方が大手スーパーの惣菜の方が量・質ともに満足度が高いと回答されました。これは既存の製造者様の方が何十年も運営されている中で、製造や仕入れの効率化を行っているためです。

ミールセレクトは、自社製造ではなく、このような優れた製造者様の商品競争力や製造キャパシティを活かしつつ、定期宅配のプラットフォームに導入している点が、既存の宅配サービスとの大きな違いです。

もう一つ、既存の惣菜宅配サービスの課題としてお客様が辞める理由として一番多かったのが、同じ材料・同じキッチンで作られたものだと飽きてしまうという点です。ミールセレクトでは、複数ブランドの商品を取り扱いマルチブランド化することで様々な商品を購入できるため、このような既存サービスの課題も解決しています。」

「店頭価格で宅配」「フードロスの削減」はどのように実現されていますか?

「店頭販売ですと、*見切りの販売ロスが売上に対して10%ほどあります。(*見切り:売れ残って消費期限が迫った商品などの値段を切り下げて販売すること)

ミールセレクトのような受注生産のシステムだと、まずこの10%分がカットできます。また、ミールセレクトでは製造工場からミールセレクトの仕分け施設に送り、各ご自宅へ配送する仕組みになっているのですが、これにより売上の約25%を占める店舗運営費もカットできます。

特に店舗運営費が大きく、店舗が駅ビルに入っているとテナント賃料も高く、人件費もかかります。ミールセレクトの手数料や配送料、EC運営費を入れてもカットしたコストの中に収まるため、店頭価格での販売の実現、フードロス削減の実現ができています。」

「3日前に注文する」という仕組みはユーザーに受け入れられましたか?

「ミールセレクトの利用者の方の中には、これまでに他の宅食サービスを利用された方も多く、注文してから数日かかるといった仕組み自体に慣れている方が多い印象です。また、他の宅食サービスでは5日~1週間前の注文が必要になることも多いので、ミールセレクトの3日前注文というのは、比較すると早くお届けできるのかなと思います。

また、その日何を食べるか日によって食べたいものを決めたい、という方もいるかといると思うのですが、どちらかというと『週の何日間は家で食べる』といった生活スタイルの方に需要のあるサービスかと思います。」

提携の惣菜ブランドを選定された基準、今後の方針などはありますか?

「タンパク質や野菜が取りやすく栄養バランスの良い商品であること、費用対効果の高い商品であることが大きなポイントでした。*ロングリストを作り、『該当する、しない』といったことを話し合いながら、メンバーが納得できる商品であるかを検証していきました。(*ロングリスト:一定の基準で選定した企業をまとめたリスト)

一方でスタートアップ企業のリリース前のサービスに提携していただけるサービスは少なく、特に大手のサービスであるほど提携いただけるまでに苦戦していました。リストの中から繰り替えしアプローチをしながら提携先の企業様を探していきました。

ミールセレクトのサービス内容について興味を持っているものの、リリース前であったため、サービスが目に見えない中で契約に至らなかった大手の企業様も多くあります。2024年8月16日にリリースしたこともあり、順次さらにラインナップを増やしていく方針です。

今後の取り扱い予定としては、Soup Stock Tokyoさんが2024年秋冬頃に開始予定です。また10月上旬にお取り扱い開始が確定しているブランドが2つあります。その他にも、まだ正式な契約前で商談中の企業様も多数あるという状況です。また、サービスの開始と同時にプレスリリースを出したのですが、プレスリリースを見て、企業様からお問い合わせをいただくことも増えました。

【プレスリリース】マルチブランド惣菜定期宅配サービスを開始!会員登録開始:2024年8月16日(金)

配送エリアの拡大は予定されていますか?

「現在(2024年9月)の配送拠点が中央区にあるため、配送エリアは中央区・港区・江東区が中心になります。この配送拠点のキャパシティがいっぱいになった段階で、次の配送拠点の拡大を検討していくことになると思います。

次の配送拠点のエリアについては、ミールセレクトの「LINEのお友達登録」のユーザーの住所登録地を参考に、需要の高いエリアから順次対応していく予定です。」

食の安全性について

ミールセレクトの食品添加物に対する考えを教えてください

「合成着色料や保存料を過度に使用した商品の取り扱いは避ける方針を取っています。
一方で、食の安全のため、適度な量の添加物の使用が好ましい場合もあると考えています。そのため、種類と量に配慮して添加物を使用し、使用した添加物の表示を徹底するお取引先様の商品を積極的に扱う方針を取っています。

食品添加物については、社内外の管理栄養士や専門家の方々とディスカッションを繰り返してきました。ご相談させていただいた方々の専門的な知見を踏まえ、添加物が含まれていること自体を否定的に捉えるのは正しくないと考えています。適切な種類と量の添加物を使用すれば、食の安全などのメリットが得られ健康への害もないことを、消費者の方々にも知っていただきたいです。」

ミールセレクトのサイトを見ると原材料についても細かく記載されています

「ミールセレクトでは、ECサイト上での*表示義務のない原材料についても、事前にお客様に伝えられるようサイト上で掲載しています。

また、弊社のお取り扱いブランドには、原材料に使用されている添加物など表示義務のないものも含めて細かく表示することを徹底しているブランドもあります。そのため、添加物の種類が多いように見えてしまう食品表示もあるかと思います。しかしながら、添加物の種類や量に慎重に配慮する製造者ほど、表示義務のない添加物も細かく表示しているケースがあることを、消費者の方々にも知っていただきたいです。」

*表示義務:食品表示法では、原材料名や原産地、賞味・消費期限、アレルギーなどについて食品の容器包装等に表示することが義務付けられている。現行の法律では、ECサイト上の食品表示情報の掲載には食品表示基準が適応されておらず、原材料の添加物使用についても表示義務が無い。参考:食品表示法

ミールセレクトの今後、目指す未来

最後に、ミールセレクトが目指す未来について教えてください

「現状のミールセレクトのアーリーアダプターとしては、共働き世帯などである程度の所得があり、すでに惣菜サービスを利用されている方。このような方の乗り換え先として選ばれることが多いサービスであると思います。

そのため、今のミールセレクトでは価格帯もやや高めの商品を主に取り扱っています。一方で、いろんな方に使っていただけるサービスにしていきたいと考えてるので、利用者の方が増えると同時にラインナップを増やしていく予定です。

自分で料理をしないことに罪悪感を持ってしまう、大変なのに自分で料理を作って子どもと食べる時間が無いという方は多くいらっしゃいます。今後は利用者の層を広げていきながら、社会に認められるサービスになっていきたいという想いがあります。

また、料理は好きだけれど毎日は大変、という方も多くいらっしゃると思うので、週末は食材で料理、平日は惣菜宅配、といった便利なオプションとして利用していただければと思っています。」

編集後記

2024年8月からスタートしたミールセレクトは、マルチブランドの商品を店頭価格で購入できる新しい惣菜宅配サービスです。今回はサービスが開始したばかりのお忙しい中、代表の八田 麻紗子さんにお話をうかがうことが出来ました。

今回、創業の想いについて教えていただいたインタビューの中で、八田氏自身の実体験から感じた女性のキャリア形成とプライベートの両立の難しさ、またそのような痛みを現代の若い世代や子育て世帯に感じてほしくないと語られていた点が印象的です。

2024年9月の取材時点では東京都内の中央区・港区の2区がミールセレクトの宅配エリアとなっていますが、今後はLINE友だち登録者が多いエリアから、拡大を計画しているとのことです。ミールセレクトを利用してみたい、ぜひ自分の街にミールセレクトが来てほしいという方は、無料の会員登録やLINE友だち登録を検討してみてください。

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